「イエス・キリストの一生」

 

 

イエスは生身の人間だった。

傷付けば血が噴き出るし、放っておけばお腹も減る。

恋愛もすれば、異性との楽しい時間もたくさん過ごした。

神様の身分でありながら人間として生まれて人間として生活した。

 

イエスは、難病を癒したり凄まじい奇跡をおこなったり、特殊な力が使えた。

だから神の子として当時の民達が間違いなく信じたのである。

それも最貧であった下層階級の羊飼いや漁師たちを中心に、イエスは神様だと熱狂的に信じたのである。

水をワインに変えたり、パンや魚を限りなく増やしたり、ハンセン氏病やてんかんを治してしまったり、死人を生き返らせた。

神しかできないそういう数々の奇跡を行い、イエスを見てみんな興奮して信じたのである。

そして彼は「見ないで信じるものは幸い。」とも、言っている。

 

困った人を助けるために数々の奇跡を行ったわけだが、それはイエスにとって神様を賛美することであった。

奇跡はもちろん超能力のようで凄いが、イエスの最大の凄みは、そうやって弱者を救ってきた先に生身の人間として無力に処刑されるところにある。

本当は無罪なのに、自分の十字架磔刑をすんなりと受け入れ、死んでいったことが凄いのだ。

何にも悪いことしてないのに国家権力によって殺された。

それも人々の救いのために、他者の罪を自分になすりつけて代わりに死んでいくことが凄いのだ。

そして殺されることで「救いが成就した。」と言っている。

それが最大の凄みなのだ。

 

なんだ、結局殺されたか、それ見たことかと。

当時のアンチイエスの輩には、イエスは散々に馬鹿にされただろう。

 

でも彼はその後もっと凄い奇跡を起こしてしまった。

なんと自分自信を生き返らせてしまったのである。

そして弟子達の前に「自分はイエスだ、わからないのか？」と、繰り返し出現する。

悲しいことにみんなイエスだとわからなかった。

まさか死んだ人が目の前に現れ話しかけてくるなんて、思いもよらなかったのである。

そしてイエスは、「信仰の薄いもの達よ。」と、生き返ってからも人類を嘆くのである。

 

彼は一人の人間としてずば抜けて高い能力を持ち、奇跡をあやつる超能力まで使い、最期には死んだ自分まで生き返らせたワケであるが、最愛の弟子達の誰もがイエスを理解不可能だった。

そんな人いるわけないじゃん、って。

イエスは生きている時からも世の民の薄い信仰を嘆き、だからこそ奇跡という神の業（わざ）を見せつけて信じさせた。

しかし、死んで生き返る奇跡を起こしてまでも、人々の信仰の薄さを嘆いている。

そういう誰からも理解されない悲しい一生を送った人でもあったのだった。