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「たった一言」

『CROSS』八つ切りサイズ/ミクストメディア

「CROSS」(八つ切りサイズ〔38×27cm〕/アクリル絵具、ラッカースプレー、画用紙)
「CROSS」(八つ切りサイズ〔38×27cm〕/アクリル絵具、ラッカースプレー、画用紙)

作者近影

ユタカ ミカエル・マリア カメガヤ
ユタカ ミカエル・マリア カメガヤ

「たった一言」

 

 

様々な原因で人生が狂ってしまうことがある。

そのうち一番怖いのが、「たった一言」である。

 

極端な例で言えば、たった一言、意地悪なことを言っただけで、相手が自殺をしてしまったり、こちらが殺されたりする。

そういう事件が、新聞に、口論の末の自殺だとか殺人だとかで、よく出ているじゃないか。

あれは、元を正せば、その「たった一言」なのである。

そうやって「たった一言」、そういうつもりで言ってはいないのに相手をイジメて傷つけてしまったりする結果、悲惨な事件が起きてしまったりする。

だから、言葉を発する時には相手の気持ちをよく考えなくてはいけないのである。

 

逆に「たった一言」で命が救えることもある。

辛く苦境に立たされている人に、優しく一言投げかける。

それだけで、その人は心が安らかになるのである。

自殺を考えていた人に「たった一言」、「生きていてくれてありがとう。」と感謝の意を伝えられたら、その人は自分を殺めるのをやめるだろう。

誰かを殺そうとしている人に「たった一言」、殺すはずのあの人が「ありがとうって感謝してたよ。」と伝えられたら殺人を思い留まるだろう。

そうやって、消えるはずの命を再生することができるのも、優しい「たった一言」なのである。

 

そういうように、「たった一言」で人生は狂いもするし、救えもするのである。

 

ちなみに筆者は、長年お世話になっていた美容院の美容師に「太りすぎですよ。」と、一言きつく言われたおかげで、もうその美容室には行くのをやめた。

確かに私は数年間で劇的に太ってしまった。

彼は、私の健康が心配だから善意で言っている、と言う。

そのくせ、太り過ぎで美容室の椅子が私には「規格外」で壊れてしまう、とからかうのである。

冗談じゃない。

善意で言う人はそうやって茶化したりしないよ。

そうやって体型のことでイジメられて苦しい思いまでして、僅かなお金でも出しますか?

私は、彼の美容室にもう行かないことで、彼との関係をここ1年間絶っている。

そのようにその美容師は、私という長年通う大事なお客を「たった一言」で失ってしまったのである。

彼の人生がそれで狂ったかは知らないが、彼は少しは寂しい気持ちを今も味わっているかもしれない。