YUTAKAの革細工
ESSAY
「革細工教室を辞める」
10年間続けてきた革細工教室を辞めることに致しました。
今現在仕事が忙し過ぎて、まともに革細工制作ができなくなってしまっているからです。
この状態で革細工教室を続けていても、予約日に仕事のために休みがちになって、制作を通して技法を学ぶ上で何にも成果がありません。
私は最近、仕事で休みがちになり、痛切にその事を感じていました。
元々、月1、2回しか教室に通わないのに、それすら安定的に通えないのでは話になりません。
仕事でアタマにゆとりがなく、教室に通う度に革細工技法を忘れてしまうのでは全然ダメでしょう。
だから教室では、その場限りの刹那的な制作に陥っていました。
例えば今制作している革バッグに関しては、レース紐をかがる時のダブルステッチとシングルステッチとの違いすら分からず、ごっちゃに混ざってしまいました。
先生に言われてそれに気がついた時、革細工を15年も続けてきたのに、正直自分のできなさ加減にショックを受けました。
まあ、そういう状態でもやる気があれば、2ヶ月に1回でも3ヶ月に1回でも教室に通えば良いのでしょうが、心のゆとりもないうえに「経済的なゆとりもありません。」
革は単価が高いために、制作に結構なゼニがかかってしまうのですよ。
面積を使うバッグのような制作ほど、材料費にお金が出ていきます。
心も金も、もう少しゆとりが出てきたら、また始めたいと思います。
また、教室内で飛び交う会話にも疲れました。
それが本当に言えば、大元の辞めた原因です。
革細工教室には女性生徒さんが多く、「誰かが何々をした?」という「人の噂話や悪口」にも花咲きます。
私も、「亀ヶ谷さんは~はどうなの?」と結構プライベートを聞かれて素直に答えれば、酷いことも言われていました。
そうやって本来の目的である革細工制作とは別に、個人的にプライベートをいじられるので、それが心から嫌でした。
もう制作中にいじられるのが煩わしくて、その日の教室制作を落ち着いてまともに行えない、というのが、最近の革教室に対する私の正直な気持ちでした。
心がとても疲弊しているのが実際のところです。
こんな状態で、お金をかけて続けているのが私は正直、苦です。
だから辞めたのです。
10年間お世話になった恩師には、革細工制作だけに及ばず生活上の様々なアドバイスも頂き、私を支えて戴きました。
なんと結婚式にも来ていただきまして、大変感謝しております。
大変心苦しい辞め方でありましたが、どうか私のわがままをお許しください。
これからは、私の今まで習得した技術を思い出しながら、自宅アトリエで個人的に制作する事にいたします。
【俳句】
・革十年 続けて咲きし 桜かな
・何事も 続けりゃ咲くさ 春の花
・冬を越し 口の災い 訪れし
・芽吹けども 辞めてしまえば 散るのみぞ
・咲く花も 口煩いが 散らす春