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「元親友のことを想う」

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」

平安時代末期の歌人・随筆家 鴨長明
平安時代末期の歌人・随筆家 鴨長明

YUTAKA作品展示の歴史の一部

現在のYUTAKA:港の作家美術協会事務局長

港の作家美術協会:千葉県ホキ美術館ツアー時、土気駅でアイスに夢中


ESSAY

「元親友のことを想う」

 

 

自分は変わる。

他人も変わる。

世の中も変わる。

時とともに、全ての存在と事象は変化してゆく。

変わらないものなど何一つない。

水の流れのように、一つとして同じ時はない。

 

例えば、今から800年前、日本の平安時代末期頃の歌人・随筆家に「鴨長明(かものちょうめい)(1155年~1216年)」が居ますが、彼の人生哲学を記した古典『方丈記』に有名な書き出しがあります。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみにうかぶうたかた(=泡沫)はかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」

これは、「変わらないように見えても変化しないものなどなく、すべては常に変化していて、やがて滅んでいく」という仏教の根本思想である無常観です。

もう800年も昔の平安時代末期頃に、「変わりゆく今」についてそのように語られていましたし、それは今も昔も人間の関心事なのです。

 

実は、私は先日、教会ミサの帰りに、20年前に親交を絶った元親友が帰り道にあるコンビニで働いているのを見ました。

彼は、私とともに絵描きを目指していた小学校からの幼馴染であり、なおかつ大親友でした。

彼とは幼少時から青年期まで、お互いの家を行き来して、どれだけ遊んで、互いの夢を語り合ったかわかりません。

しかし、20歳を過ぎ、お互いに大人になって様々な事情を抱えるようになってから、私は彼から絶交されて、連絡しても通じない音信不通の関係になりました。

その彼が、コンビニ店員となり、レジに立っていたのです。

彼だとハッと気が付いた時には、心が一瞬凍りつきましたが、知らないふりをして店を出ました。

私は、彼と縁りを戻す気は更々ありませんし、気がつきましたが無視しました。

 

その時に、瞬間的に察してしまったのです。

画家の夢を叶えた私と、叶えられずにコンビニバイトをしている彼。

仮に縁りを戻しても、お互いの立ち位置を気にしずぎて、もうきっと関係はうまくいかないでしょう。

 

あゝ無常とは、この事ですね。

もともと幼少時から彼の方が天才的に絵が上手く、私はどちらかと言えば努力家タイプの絵画愛好者でした。

彼からは「所詮、カメ(=私のあだ名)なんかこの程度だよ。」なんて、私の才能や将来の身分について貶されたことも多々ありました。

でも、あれから20年が経ち、私の方が夢を叶えてしまった。

立場が逆転してしまった今、彼は空いた口が塞がらなくなった事でしょう。

そして、私の今をネットで知って、続けた者には敵わないと、肌身で感じていることでしょう。

今はきっと、私への悔しさを噛み締めていることでしょうね。

 

彼はもう、仮に再びプロの絵描きを目指しても、もうダメかもしれません。

幼少から大親友だった私をある時拒絶して、一方的に絶交したのですから。。。そんな薄情な人間じゃ、人の縁で成り立つアートの世界で成功できないかと察します。

彼の気持ちが、熱い夢を語り合った昔の状態を取り戻せれば、なんとかプロ画家にもなれるでしょうが、きっと難しいことだろうと思いますね。

人は変わるんですよ。

 

私の彼に対する望みがあるとすれば、彼にまた人を大事にする優しい気持ちを取り戻してもらいたい、と言う事だけです。

もう、私とは縁りを戻さなくても構いませんが、優しい気持ちを取り戻せたら、またアートの世界に帰って来れば良いと思います。

 

 

【俳句】

・人は皆 支えて叶う 夏の夢

・愛捨てて 叶う夢なし 夏の空

・今昔 縁が織り成す 虹の橋

・レモンの 容れモン 空かざし

・レモン水 酸味と甘み 人のやう